どこまでも一緒にいれたらいいな
ちょうど蹴るにはちょうどいい石ころを見ながら歩いていた
ちょっと遠くに蹴ってしまったら、アスファルトに紛れてみえなくなってしまいそうな色をしている
道路の脇の側溝に落ちないように、落ちないように
近くの古びた理容室は、おっさんの頭が切られている
なんでここを選んだんだろう
なんでここにいこうと思ったんだろう
たぶんまだ、おっさんにちゃんとした髪があった時にここを選んだんだろうな
赤、青、白の三色のあれがハッキリとくるくる回っていた頃なんだろう
今は汚れているそれの、過去の栄光は私は知らない
だいたい散髪屋っていうのは、どうしてあんなに解放的なのかな
切られている姿なんて、見せれるものでもないし、恥ずかしいだけに決まってる
そこに客が入っているかどうかは通うかきっかけにはなりはしないのに…
美容院の待ち時間に、レインコートのようなものの隙間から手を出して、鏡に映る自分の姿をパシャリと撮って投稿してるのをみる
理由と目的について50文字以内で述べてほしい
私はそれについて10文字でその気持ち悪さを述べられる自信がある
いつのまにか、蹴っていた石ころのことをすっかり忘れていた
けっこう一緒に歩いたのにな
だからといって、そいつのために引き返すことなんてしない
振り返ることすらしない
どこかの穴にでも落ちたんだろう
それっきり、石ころのことなんて二度と考えることはなかった