集合ポストには、
就活イベントの案内と、引越しの業者のチラシが入っている
そのポストの横には
住人の名字が書かれた紙が部屋番号の下に
差し込まれている
住みはじめて3年が経とうとしている
自分の名字は、ライトに焼かれ、黄ばんでいる
真っ白な紙はまだ、入居して
そんな時間は経っていないようだ
その中で、「管理人室」と書かれた紙は
ひときわ色褪せている
管理人は老夫婦で
夫はタクシードライバーをしているようだ
お昼ころ、マンションの前で
おばさんがタクシーを洗車しているのを見かけたことがある
三年もの間に、結構怒られた
夜遅くに騒いだこと、ゴミの分別が不十分だったこと、友達の自転車に号室を書いた紙を貼らなかったこと
こんなことで怒るのかと、イライラをすることもある
でも、普段は優しく自分のことを気にかけてくれている
以前、新聞を読みもしないのに契約させられて
玄関のポストに溜めっぱなしにしてたことがある
自分の安否を心配してくれて、連絡をくれていた
だけど、また変なことで怒られるに違いないと無視していた
そうすると、部屋のチャイムを、鳴らしてきた
そこまで、心配してくれたのに
と申し訳なくなった
そんな夫婦は、ずっとここで同じ生活をしているんだろう
人の出入りの激しいこの建物の一階に住んで
特別なことも何もなく、送り出しては向かい入れているのだろう